足底筋膜炎

足底筋膜炎とは

足底腱膜炎とも呼ばれる疾患で、足裏のかかとから足指の付け根をつなぐ線維(足底腱膜)が炎症を起こして、痛みが生じます。マラソンやハイキング・長時間の立ち仕事によって土踏まずに負担がかかることで、足底腱膜が炎症を起こし傷ができます。足底腱膜は、土踏まずを支える大切な役割をしていて、足への衝撃を緩和させるクッションの働きもしています。
足底腱膜に過剰な負荷とストレスが加わることで、クッション機能が低下し、足底腱膜と骨の付着部分が炎症します。足底腱膜が硬くなることで伸縮しにくくなってしまい、筋肉が傷つき(細微断裂)や組織が変性してしまいます。これによって、足底腱膜炎は、腱付着部障害(エンテソパチー)と呼ばれています。何度も腱膜がくっ付いている部分が引っ張られ、力学的ストレスを受けることで腱付着部に傷が生じ、その発生と修復バランスが崩れることで症状が引き起ります。これらのオーバーユースとなっている原因を見極め、改善することで再発を防ぐことが大切です。
足の裏に過剰な負担がかかる動作として、マラソン・ジョギング・ハイキングなどのスポーツや長時間の立ち仕事などが挙げられます。スポーツをしない方でも、中高年によく見られる疾患です。

原因

足底腱膜と骨の付着部分で炎症が起こり、足底腱膜が硬くなって上手に伸び縮みできなくなるのが原因です。足底腱膜がくっついているかかとや、親指下辺りの筋肉を引っ張り筋肉が傷つき、微細断裂がおきます。これらが原因となり、周辺に痛みが生じます。

 繰り返し強い衝撃を足に与えるスポーツ

繰り返し強い衝撃が足裏に与えることで、足底筋膜は硬くなります。マラソンなどがそれに相当し、毎日のケアを継続して行う必要があります。また、アスファルトのように硬い地面は、衝撃もさらに強くなるため、足裏への衝撃や負担が強くなってしまいます。

加齢や疲労の蓄積

長時間の立ち仕事による疲労だけではなく、加齢によっても足底腱膜は固まってしまい、クッション機能が低下してしまいます。

足のアーチの高さが崩れている

足のアーチが高すぎたり、低かったりする場合、不均等な負荷やストレスが足裏や足底腱膜に負担がかかります。特に、足裏にタコが出来ている人は、アーチが崩れている場合が多いので注意が必要です。

ふくらはぎやアキレス腱が硬い人

ふくらはぎやアキレス腱が硬いと足を引き上げる力が弱いため、足の踏み返す際、足底腱膜に負荷がかかります。

新しく靴に替えた

新しい靴に替えて慣れてない場合、足底腱膜に負担がかかりやすくなります。靴底が薄すぎる靴や、クッション性が無い靴、かかとが固定されない靴、とくに靴のサイズが合っていない場合は、足底腱膜に大きな負荷がかかります。歩いているときに、靴の中で足が動かないことが大切です。また、現代人は運動不足や靴の発達が原因で、足のアーチを支える力が低下している人が増加しています。足のアーチを支えられず、大きな衝撃を支える力が弱まることで、さらに足底腱膜に負担がかかります。

症状

荷重時の足底部痛の好発部位は、かかとに近い部位・土踏まず(中央部)・遠位部の3カ所です。一般的に多いのは、朝起きて最初の一歩踏み出す時が痛い・急に歩き出す時が痛いとされています。それ以外では、以下のような症状が見られます。

  • 歩いていると踵やその周りが痛い
  • 足の裏が突っ張っている感じがする
  • 足の裏を押すと痛い
  • 朝が一番痛いが、動き出すと徐々に軽減してくる
  • 運動した後に痛みが出る
  • 運動した翌日が痛い
  • 階段・つま先立ちなどの時が痛い
  • 夕方になると痛みが増す

等のように、足底腱膜炎の症状には個人差があり、急に強い痛みに襲われたり、だんだんと痛みが増してきたりする場合があります。歩く動作は日常生活において欠かすことのできない動作です。発症後も、歩くことは避けられない為、患部の負担軽減が非常に難しく、治療が困難とされています。長いケースでは、1年以上症状が続く場合があります。治療を始めてもなかなか症状が治まらない場合は、難治性足底腱膜炎と診断されることがあります。

診断・検査方法

レントゲン検査

足底腱膜は、炎症の症状のためレントゲン検査を行っても骨の異常は確認できません。しかし、足底腱部と骨の付着部が強く引っ張られることで、踵骨棘(しょうこつきょく)という棘が生じます。疼痛が無くても踵骨棘が現れるケースが多く、この棘があるということが踵骨部に負担がかかっているということが分かります。レントゲン検査は、その他の疾患との識別や、腫瘍との等識別にも活用されます。

疼痛誘発検査

足底腱膜の圧痛や腫れ・痛みの部位などを確認する検査です。

超音波検査

足裏腱膜付着部周辺の腫れや炎症・肥厚などの有無を確認する検査です。被爆などの身体への影響がなく、検査における痛みもないため、小さいお子さんや妊婦さん、ご高齢の方まで幅広い年齢の方が安心して受けて頂ける検査です。

MRI検査

炎症の程度や範囲・腱の損傷程度・腱の異常などをより精密に検査することが可能です。足全体の把握が可能で、踵骨棘(しょうこつきょく)が痛みの原因の場合でもMRI検査で判断することができます。MRI検査はCT検査・レントゲン検査とは異なり、放射線を使用しないので被爆の心配がありません。

治療方法

保存療法

理学療法や薬物療法を用いて痛みを抑える治療を行っていきます。まずは、安静に過ごすことを心がけて、症状が落ち着くまでは負担のかかる動作を控えてください。立ち仕事や、原因となっているスポーツは一時的にお休みすることをお勧めします。

リハビリテーション

理学療法士の指導のもとでストレッチや筋トレなどを行うなど、リハビリによる治療が中長期的に見て非常に有効です。発症のきっかけとなるものがない方は、足底腱膜への負担が原因のため、なるべく負担がかからないようにリハビリを進めていきます。特に、下肢後面の柔軟性の低下や足指の機能不全・偏平足などの形態異常など、患者さんに適したアプローチを行います。また、患部の負担軽減の為にテーピングなども行います。加えて、超音波治療・電気療法などの物理療法も組み合わせてリハビリテーションを実施しています。足部だけではなく、姿勢不良や股関節の柔軟性低下・痛い部位をかばって歩いている場合などは、全身的なコンディショニングを行っています。

薬物療法

痛み止め(NSIDSなど)や湿布で炎症を抑えていきます。鎮痛剤の服薬では長期間の服薬や適切な服薬方法でないと、副作用で胃が荒れることがあるので注意が必要です。

注射

ステロイド注射

痛みによって仕事に支障が出る場合や、上記の治療でも改善しない場合には、ステロイド注射を行います。痛みのある部分に直接注射することで、1~2カ月程度は症状が改善します。注射は、一時的に症状を抑えるだけであって、痛みが再燃する場合があります。症状の根本原因を改善させるためにも、リハビリテーションを並行して行い、総合的に症状を改善させていく必要があります。注射を繰り返し行うと、次第に組織をもろくしてしまい、症状を悪化させてしまう場合があるので注意が必要です。

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